サーボアナライザを用いた3端子レギュレータの周波数特性測定例 (2022/3/3)

   他の測定例:左上のボタンを押すとDCDCコンバータの開ループ周波数特性の計測例を示します。

1.概説
 サーボアナライザを用いた周波数特性測定の例題として,基準電圧源として使われることの多い,3端子のシャントレギュレータTL431の周波数特性を測定します。測定は,TI社のTL431のアプリケーションノート[1, 2]を参考にしました。

2.測定回路ならびに接続
 測定回路ならびに,サーボアナライザASA-2000との接続を図1に示します。この回路定数の場合,レギュレータ出力電圧は約7Vとなります。


図1 TL431の周波数特性G(s)測定回路とサーボアナライザ接続

 この測定回路と接続設定において,TL431は図2のような閉ループ状態で動作していますが,Ch-B/Ch-Aの測定結果はTL431単体の周波数特性G(s)となります。
 単体特性とは,R1とR2を介したフィードバック利得Kを含まないという意味です。


図2 閉ループ制御系

  また,制御系からみれば,ネガティブフィードバック経路で周波数特性を測定していますので,位相特性は180°反転したものすなわち,-G(s)が測定されます。

 また,TL431の低周波領域での利得が大きいため,励起信号EXCは振幅80mV程度のきわめて小さい信号を用いないと,低域測定でTL431のOutputが飽和するので,正しい測定ができないことに注意する必要があります。

3.測定結果
 周波数特性G(s)の測定結果を図3に示します。ただし,位相特性はASA-2000の位相反転機能を用いて,正しい位相で表示するようにしてあります。 TI社の2つのアプリケーションノート[1,2]においても,周波数特性は多少ばらついていますが,ほぼ同様の結果となっています。

 図3からわかるように,TL431は利得特性が-40dB/dec程度の勾配で減衰していますので,ほぼ2次系システムであり,500kHz付近において位相進み補償が行われています。

 次に,ASA-2000の利得補正機能を用いて,R1とR2を介したフィードバック利得K(dB)を補正し,図1のレギュレータ制御系全体の開ループ周波数特性K・G(s)を求めます。しかるに,

       ····································  (式1)

 これを補正して得られる制御系全体の開ループ周波数特性K・G(s)は,図4のようになります。

  
図3 TL431単体の周波数特性G(s)測定結果   図4 制御系全体の開ループ特性K・G(s)

(1) 図1の回路定数の場合,クロスオーバ周波数は約500kHzで,-180°からの位相余有は55.4°となっています。TL431では,フィードバック利得Kによってレギュレータ出力電圧を変えることができます。 それにともない開ループ利得が上下に変化するため,クロスオーバー周波数と位相余有が変化しますが,K=0dB(REF/CATHODE直結,出力2.49V)~-23dB(出力36V)の範囲において十分安定であることがわかります。

(2) 図4はレギュレータ制御系全体の開ループ特性ですので,ASA-2000のナイキストプロットを見てみると,図5のようになっており,緑色のK・G(s)プロットがピーク値Mp=2dBの円と接していることがわかります。


図5 ナイキスト線図

(3) これから,閉ループ制御系の周波数特性Gc(s)も,ピーク値Mpが2dBとなることが予想されます。 以下では,図2と異なり,図6の形で閉ループを考えます。


図6 閉ループ制御系

       ····································  (式2)

 実際に,ASA-2000のオプション機能である,開ループ特性から閉ループ特性への変換計算を用いて閉ループ周波数特性を求めると,図7のようになります。


図7 制御系全体の閉ループ周波数特性Gc(s)

(4) 図7から,Peak Resonance Mpは1.9dB(=1.24),帯域幅(-3dB)は800kHz程度であることがわかります。以下では,制御系を2次系近似して特性を検討します。閉ループ利得ピークでの周波数から,固有周波数fnは316kHzとなります。ダンピングレシオδとすれば,

           ········································  (式3)

  となります。

参考文献(TI社のアプリケーションノート)
[1] JAJS443P –AUGUST 2004–REVISED NOVEMBER 2018
[2] SLVSDQ6A –JULY 2018–REVISED NOVEMBER 2018